【第一章】転落準備
年末も近づいてきた小雪が舞うある日、某市役所を訪れていた。
「生活保護」の申請であった。
住所不定に無職。おまけに財布には数百円の硬貨のみ。
貯金や財産なんてモノは持ち合わせていない。
完全に「詰んだ」人間である。
頼れる親類や知人もいない。
人間、落ちる時は早いなぁ~
最後のセーフティーネットに頼る時が自分にも訪れた。
今までも何回か窮地に陥った事もあったが自力で乗り切ってきたが
今回だけは何ともならなかった。
役所の窓口で生活保護の申請書類やその他書類を淡々と記入。
すんなりと書類を提出する事が出来た。
住む所も無いので、所謂「無低」を紹介してくれる事になり
担当者が来るまで待機。
「無低」とは無料低額簡易宿泊施設の事で、あまり良い印象はない。
貧困ビジネスの温床となっているのが実情。
だいぶ昔に報道で見た事がある。
でも、現状はそこに頼らざるを得ない。
覚悟を決めて入所するしかない。
無低の担当者に色々聞いてみた。
入所している方の中には刑務所から出所して住む所が無い人や
ホームレスだった人もいるらしい。